
今年もまた、記録的な猛暑が予想されています。気象庁の発表では、2026年7〜9月の平均気温は全国的に高い見込みで、2025年夏はすでに1898年の統計開始以降もっとも暑い夏となりました。土壌が乾燥しやすくなり、地力が落ち、収量が不安定になる。多くの農業経営者が、この数年で実感している変化ではないでしょうか。
こうした気候リスクへの備えとして、そして経営の新たな収入源として、あらためて注目したいのが「環境保全型農業直接支払交付金」です。名前は知っていても、実際の中身や申請方法までは把握していないという方も多い制度です。
化学肥料・農薬を減らす取組に、国・県・市町村が直接支払う
この交付金は、化学肥料と化学合成農薬を原則5割以上低減する取組と合わせて、地球温暖化の防止や生物多様性の保全に効果の高い営農活動を行う農業者や農業者団体に対し、国・都道府県・市町村が一体となって支援するものです。平成23年度から続く制度で、令和8年度も継続して実施されます。
対象となるのは、個人単独の農業者ではなく、複数の農業者、あるいは複数の農業者と地域住民などで構成する任意の団体です。裏を返せば、地域の仲間や集落営農組織と一緒に取り組むことで初めて活用できる仕組みであり、環境活動そのものが地域のつながりを生み出す設計になっています。
具体的にいくらもらえるのか
実際の加算内容を見てみましょう。土壌の炭素貯留効果が高い有機農業に取り組む場合、10アールあたり2,000円が加算されます。条件は、土壌診断を実施したうえで、堆肥の施用、緑肥の施用、バイオ炭の投入のいずれか1つ以上を行うことです。バイオ炭は農地に施用すると炭素を土壌中に長期間閉じ込められるため、気候変動対策の切り札として近年評価が高まっている資材です。
さらに、産地としての厚みを増したい地域には別の加算もあります。有機農業に新しく取り組む農業者を受け入れ、栽培技術の指導などを行う農業者団体には、新規に有機農業を始めた面積に応じて10アールあたり4,000円が交付されます。個人の経営改善だけでなく、産地全体で有機農業の担い手を育てる活動そのものが評価される仕組みです。
千葉県などの実施例では、緑肥や堆肥の施用、総合的病害虫・雑草管理(IPM)、炭の投入といった複数の活動を組み合わせることも認められており、それぞれの経営の実情に合わせた設計がしやすくなっています。
申請は6月末締切、来年度に向けて今から動く
注意したいのは申請期限です。原則として、取組を行う年度の6月末までに申請する必要があります。すでに令和8年度分の受付は進んでいる時期ですが、申請受付の事務を担うかどうかは市町村ごとの判断に委ねられている部分もあるため、まずは農地のある市町村の担当窓口に、この事業への参加が可能かどうかを問い合わせることから始めてください。今年度に間に合わなかった場合も、来年度の申請に向けて秋から冬のうちに土壌診断や団体づくりを進めておけば、スムーズに動き出せます。
あわせて知っておきたいのが、みどりの食料システム法の「みどり認定」です。都道府県・市町村の基本計画に沿って環境負荷低減の5カ年計画を策定・申請すると、税制優遇や融資などの支援を受けられ、「グリーンな栽培体系への転換サポート」を通じてスマート農業機械の導入支援も得られます。環境保全型農業直接支払交付金と組み合わせれば、環境負荷の低減と経営の効率化を同時に進めることができます。
土づくりは、経営と地域を同時に強くする投資
GREEN BENEFITが大切にしているのは、農業と環境、そして地域を切り離さずに考える視点です。堆肥やバイオ炭による土づくりは、単に交付金をもらうための作業ではありません。猛暑が続く中でも水持ちの良い土をつくり、地力を維持することは、これから先の経営の安定に直結します。そして、地域の農業者団体で取り組むことは、担い手不足に悩む産地に新しい人の輪をつくることにもつながります。
まずは自分の農地がある市町村に、この交付金への参加可否を確認するところから始めてみてください。土づくりへの一歩が、来年の収量とこれからの経営基盤を同時に支えてくれるはずです。