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改正労災保険法で農業経営者が今から備えるべきこと

2026年7月14日 | 読了:約3分
改正労災保険法で農業経営者が今から備えるべきこと(イメージ画像)

2026年7月10日、農林水産業の小規模な事業主を対象に労災保険の加入を義務づける改正労災保険法が成立しました。新たに強制適用の対象となる事業主は、最大で約22万に上るとみられています。「うちは家族経営だから関係ない」「今までも入っていなかったし大丈夫」——そう思われている方ほど、実は今回の改正で対応が必要になる可能性があります。施行日や細かな運用は今後、政省令で定められていく段階ですが、制度の方向性はすでに固まりました。慌てて対応することにならないよう、今のうちに内容を押さえておきましょう。

これまで「任意」だった仕組みが「義務」に変わる

これまで農林水産業の一部の事業所は、労働者数が少ないことを理由に労災保険への加入が任意とされる「暫定任意適用事業」という特例の対象でした。加入するかどうかは事業主の判断に委ねられていたのです。しかし厚生労働省と農林水産省による検討の結果、業務中のケガや病気を等しく補償できる体制を整えることが、農林水産業全体の持続可能性を高めるとの結論に至り、この特例は廃止される方向で法改正が進みました。

農作業には熱中症や農機具による事故など、他の業種に比べて労災リスクが高い場面が少なくありません。実際、農業の労災保険料率は1000分の13と、業種平均より高めに設定されています。従業員はもちろん、家族従業員やパート・アルバイトを雇っている経営体にとって、補償体制の有無は「万が一」のときの経営継続そのものを左右する問題です。今回の改正は、こうしたリスクに現場が個別に対応するのではなく、制度として広く受け止めようという転換だといえます。

なお、経営者自身のケガや病気については、雇用する従業員向けの労災保険(本則)とは別に、任意で加入できる「特別加入制度」が以前から用意されています。今回の法改正は主に本則部分、つまり雇用している人を対象とした強制適用の範囲拡大が中心ですが、経営者自身の備えとして特別加入制度をあわせて見直す経営体も増えています。両者は目的も加入手続きも異なるため、混同しないよう整理しておくことが大切です。

経営者が今から準備できること

具体的な施行日や経過措置はこれから示されますが、経営者として今からできる備えは三つあります。

まず、自分の経営体がどの区分に該当するかを確認することです。雇用する従業員向けの労災保険(本則)と、経営者自身が任意で入る特別加入制度は別の仕組みです。今回の改正でどちらにどのような影響があるのか、労働基準監督署やJA、社会保険労務士などに早めに相談しておくと安心です。

次に、保険料負担を資金計画に織り込んでおくことです。加入が義務化されれば、当然ながら保険料というコストが発生します。年間の収支計画の中に、あらかじめこの負担を見込んでおくことで、施行時に慌てずに済みます。

そして、この機会に安全衛生管理そのものを見直すことです。労災保険は「事故が起きた後」の補償ですが、本質的に大切なのは事故を未然に防ぐ職場づくりです。熱中症対策や機械作業の安全手順の再確認は、保険料以上に経営を守る投資になります。

人を守る経営が、地域の農業を守る

労働環境の整備は、単なるコスト増ではありません。安心して働ける農業現場は、新規就農者や若い担い手を惹きつける土台になります。人手不足と高齢化が進む産地において、「ここなら安心して働ける」と思ってもらえる経営体が増えることは、地域の農地が耕作放棄地にならず守られていくことにも直結します。環境と地域の持続可能性を軸に農業経営を支援するGREEN BENEFITとしても、労務・安全面の整備は、ソーラーシェアリングや環境保全型の取り組みと並んで、これからの農業経営に欠かせない基盤だと考えています。

制度の詳細が固まるのはこれからですが、「知らなかった」で対応が後手に回らないよう、まずは自分の経営体の現状確認から始めてみてください。

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