
「近所の農地を任せたいという声はあるけれど、うちだけで動くのは難しい」——中小規模の農家や農業法人の経営者から、こうした声をよく耳にします。担い手の高齢化やリタイアが進む一方で、飛び地のように散らばった農地をどう受け止めればよいのか、悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
農地集積率62.1%、農地バンクが実績の6割を担う
そんな中、農林水産省は2026年6月16日、2025年度における農地集積・集約化の実績を公表しました。担い手への農地集積面積は前年度から0.7万ha増加し、全耕地面積に占める割合は62.1%に達しています。中でも注目したいのが「農地バンク(農地中間管理機構)」経由の集積です。制度創設以降の集積増加面積のうち、農地バンクを通じたものが約25.9万haと、全体の約6割を占めるまでになりました。政府は2030年度までに集積率7割を目標に掲げており、今後も後押しが続く見通しです。
農地バンクの仕組みと特例事業
農地バンクは、農地を貸したい所有者と、規模を広げたい担い手をつなぐ中間的な受け皿です。単なる仲介にとどまらず、リタイアなどで手放したい農地をバンクがいったん買い取り、規模拡大を目指す担い手へ売り渡す「特例事業」も用意されています。所有権の移転までしっかり支援してもらえる点は、個人間の交渉に不安がある経営者にとって心強い仕組みです。
さらに、小規模な農地がまとまって1〜2haの単位になると、ドローンや自動操舵といったスマート農機の効果が格段に発揮しやすくなります。飛び地のままでは移動時間や作業の段取りにロスが生じますが、集約された農地であれば省力化技術の投資対効果も高まり、収益改善につながりやすくなるのです。
令和8年度に活用できる支援策
令和8年度は、こうした集約化を後押しする支援策も具体化しています。「農地集約化促進事業」には80億円の予算が計上され、地域計画に基づく集約の取組を支援します。また「農地利用効率化等支援交付金」では、農地の集約化や農業用機械・施設の整備に対し、事業費の30%以内、基本上限300万円(経営規模要件を満たせば最大600万円)が交付されます。融資の活用が条件となるため、金融機関やJAへの早めの相談がポイントになります。
規模拡大は「環境」と「地域」にもつながる
農地集約化は、経営効率の向上だけにとどまりません。福井県小浜市では、約2.3haの荒廃農地を中核的な担い手に集約し、米・麦・大豆の大規模生産と雇用創出を同時に実現した事例があります。放置されれば景観の悪化や獣害の温床にもなりかねない遊休農地を、地域の担い手が引き受けて活用することは、環境保全と地域の活力維持を両立させる取組でもあります。農業経営の持続性と、地域の田園環境を次世代へつなぐこと——この両輪こそ、GREEN BENEFITが大切にしたい農業のかたちです。
相談から申請までの進め方
実際に動き出す際の流れも押さえておきましょう。多くの自治体では、市町村やJAが窓口となって「地域計画(人・農地プラン)」の策定に関わっており、まずはここに規模拡大や集約の希望を伝えることが最初の一歩になります。地域計画に位置づけられた中心経営体であることが、農地集約化促進事業や農地利用効率化等支援交付金の申請要件にもつながるため、早めに地域の話し合いに参加しておくことが後々の交付金活用をスムーズにします。また、交付金の多くは融資の活用が前提条件となっているため、金融機関やJAバンクとの事前相談もあわせて進めておくと安心です。
もう一つ意識しておきたいのが、集約後の営農計画です。せっかく農地がまとまっても、作付け品目や作業体系が定まっていなければ、スマート農機への投資効果は十分に発揮できません。ドローンによる防除や自動操舵トラクターの導入を見据えるなら、集約する農地の形状や用水条件を事前に確認し、どの作業をどこまで省力化できるかをあらかじめ試算しておくことをおすすめします。規模拡大は目的ではなく、経営を強くするための手段だという視点を忘れずに進めることが大切です。
まずは、お住まいの市町村や都道府県の農地中間管理機構の窓口に、現在の農地の状況や規模拡大の希望を相談してみることから始めてみてはいかがでしょうか。制度や交付金の詳細は年度ごとに更新されるため、最新情報を確認しながら、無理のない一歩を踏み出すことをおすすめします。